私は長年工場で働いていますが、ときどき新しく入ってきた人の教育や指導を任されることがあります。
教育専任の担当者というわけではありませんが、人に仕事を教える立場になると、毎回それなりの心理的負担を感じます。
特に工場では、安全に関わることを曖昧にするわけにはいきません。
しかし、注意するにも言い方があります。
「どこまで厳しく注意してよいのだろう?」
「安全のために強く言うことと、パワハラの境界線はどこにあるのだろう?」
最近、Amazonプライム・ビデオでドラマ『不適切にもほどがある!』を見始めたこともあり、平成と令和で職場のコミュニケーションがどう変わったのか、気になって調べてみました。
この記事は、昔の指導が良かったとか、今の指導が悪いとか、そういう結論を出すためのものではありません。
一人の工場勤務者として、今の世の中ではどのようなコミュニケーションが求められているのか、気になって調べたことをまとめた記事です。
専門家による法律解説ではなく、私自身の疑問から始まった調査記録として読んでいただければと思います。
結論|厳しい注意がすべてパワハラになるわけではない
最初に、今回調べてわかったことを書いておきます。
仕事上必要な注意や指導が、すべてパワハラになるわけではありません。
厚生労働省の指針では、業務上必要で、社会通念上相当な範囲で行われる適正な指導は、職場のパワーハラスメントには該当しないとされています。
ただし、安全のためだからといって、何を言っても、何をしても許されるわけではありません。
特に、人格を否定する言葉や身体的な暴力は問題になります。
つまり大切なのは、注意するかどうかだけではなく、何のために、どのような方法で伝えるかということのようです。
約25〜28年前、先輩から聞いた職場の話
私が今の仕事に入った頃、先輩たちから昔の職場の話を聞いたことがあります。
その話によると、仕事で失敗すると頭を叩かれたり、どつかれたりすることもあったそうです。
言葉遣いも非常に厳しく、今ではなかなか考えられないような口調で怒られることもあったと聞きました。
もちろん、これは先輩から聞いた話です。
私自身は幸いにも、そのような暴力的な指導を受けたことはありません。
ただ、話を聞きながら思ったことがあります。
「もし自分がその立場だったら、絶対に辞めていたかもしれないな……」
昔のすべての職場がそうだったとは思いません。
しかし、少なくとも私の身近な先輩たちの経験には、そういう時代の話が残っていました。
ドラマ『不適切にもほどがある!』を見て考えたこと
最近、Amazonプライム・ビデオで『不適切にもほどがある!』を見始めました。
2024年にTBSで放送された、阿部サダヲさん主演、宮藤官九郎さん脚本のドラマです。
1986年から2024年にタイムスリップした主人公が、昭和と令和の価値観の違いに直面する物語です。
まだ見始めたところなので、作品全体について語れるほどではありません。
それでも、昭和と令和では「当たり前」がずいぶん違うのだなと考えるきっかけになりました。
また、昔見たドラマ『愛という名のもとに』も思い出しました。
1992年(平成4年)にフジテレビで放送された、鈴木保奈美さん、唐沢寿明さん、江口洋介さんらが出演するドラマです。
大学時代のボート部の仲間7人が、社会人になってからさまざまな悩みや問題に直面する物語でした。
その中でも、今回の職場コミュニケーションというテーマで思い出したのが、中野英雄さんが演じた倉田篤(くらた あつし)、通称「チョロ」です。
チョロは証券会社で営業マンとして働いていましたが、営業成績が振るわず、杉本課長(加藤善博さん)から厳しい叱責を受けていました。
今の感覚で見ると、パワハラ確定!!!と思うような場面も描かれています。
チョロは仕事だけでなく私生活でも問題を抱え、最終的には悲しい結末を迎えます。
当時このドラマを見た私にとっても、印象に残っている登場人物です。
今回改めて調べてみると、チョロを演じた中野英雄さん自身も、後年のインタビューでこの役について振り返っていました。
もちろん、ドラマはフィクションです。
1990年代の証券会社や一般企業が、すべてこのような職場だったというわけではありません。
ただ、こうした厳しい上下関係や営業ノルマを題材にしたドラマが平成初期に放送されていたことを考えると、当時と令和の職場コミュニケーションの違いについて、改めて興味が湧きました。
参考:週刊女性PRIME・チョロ役の中野英雄さんが語る当時の思い出
ただ、こうした作品と先輩から聞いた話が重なり、昔と今の職場について改めて興味を持ちました。
平成と令和の職場は、どう変わったのか?
時代による違いを、制度の変化と一般的に語られる職場文化の違いから整理してみました。
なお、以下はすべての会社に当てはまるものではありません。
| 時代 | 職場の特徴・変化 |
|---|---|
| 昭和後期〜平成初期 | 上下関係や厳しい指導を重視する職場があったとされる時代。暴力的な指導を受けたという体験談もある。 |
| 平成中期 | 職場のいじめや嫌がらせ、パワハラへの社会的関心が高まっていく。 |
| 平成後期 | ハラスメント防止や働き方の見直しが進み、指導方法への関心も強まる。 |
| 令和 | 企業にパワハラ防止措置が義務付けられ、相談体制や適切な指導方法がより重視される。 |
法律面では、2020年6月から大企業、2022年4月から中小企業にも、職場のパワハラ防止措置が義務付けられました。
昔は許されていたから今も許される、という話にはなりません。
一方で、昔の職場にも、先輩が後輩の面倒を見たり、仕事を丁寧に教えたりする文化はあったはずです。
時代全体を良い・悪いで決めるのではなく、残すべきものと変えるべきものを考える必要があるのだと思います。
そもそもパワハラとは?厚生労働省の基準を調べてみた
厚生労働省の指針では、職場のパワハラは次の3つの要素をすべて満たすものとされています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
- 労働者の就業環境が害されること
つまり、上司が部下を注意したという事実だけで、直ちにパワハラと決まるわけではありません。
注意した理由、内容、方法、回数、相手の状況などを総合的に考える必要があります。
パワハラには代表的な6つの類型がある
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る、物を投げつける |
| 精神的な攻撃 | 人格否定、脅迫、ひどい暴言 |
| 人間関係からの切り離し | 隔離、仲間外し、無視 |
| 過大な要求 | 明らかに遂行できない仕事を強制する |
| 過小な要求 | 合理的理由なく仕事を与えない |
| 個の侵害 | 私生活へ過度に立ち入る |
これらは代表例であり、実際の判断は個別の事情によって異なります。
参考:厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントとは
工場では、安全のために強く注意する場面もある
ここが、私にとって一番気になっていた部分です。
工場には、機械や重量物など、扱い方を間違えると大きな事故につながるものがあります。
例えば、危険な場所に人が近づいているのを見つけたとします。
そんなときに、落ち着いた声でゆっくり説明していては間に合わない場合もあるでしょう。
「危ない!止まって!」
と、大きな声を出して制止する必要があるかもしれません。
では、それもパワハラになるのでしょうか。
厚生労働省の指針を確認すると、必要性や相当性、当時の状況などを総合的に判断することになっています。
切迫した危険を避けるための短い制止と、危険が去った後も長時間怒鳴り続けることは、同じではありません。
私は、この違いが非常に重要だと感じました。
安全のための注意と人格否定は分けて考えたい
例えば、同じミスを注意する場合でも、伝え方には違いがあります。
| 避けたい言い方 | 改善を目指す言い方 |
|---|---|
| 「お前は何回言ったらわかるんだ!」 | 「同じミスが続いているので、原因を確認しよう」 |
| 「バカか!辞めてしまえ!」 | 「この作業は危険なので、手順を守ってほしい」 |
| 「そんなこともできないのか!」 | 「どこが難しいか、もう一度確認しよう」 |
| 危険が去った後も怒鳴り続ける | 危険を止めた後、落ち着いて理由と対策を説明する |
これは法律上の判定表ではなく、私が調査内容をもとに考えた言い換え例です。
もちろん、優しく言えば何でも解決するわけではありません。
何度も同じ危険行為を繰り返す場合には、作業を止めることや、上司を交えた対応が必要になることもあるでしょう。
大切なのは、危険な行動を見逃さないことと、相手の人格を攻撃しないことを両立することだと思います。
世の中の人はどう考えている?新人教育とパワハラに関する10の声
今回、私が特に気になったのは、実際に人を教えている人や、教わる立場にいる人たちがどう感じているのかということです。
そこで、noteやReddit、調査機関の記事などから、異なる立場の意見を10件集めてみました。
以下は、それぞれの投稿や記事の内容を私なりに要約したものです。本人の発言をそのまま引用した文章ではありません。
1.パワハラが怖くて、必要な指導までためらってしまう
社会保険労務士の方が書いたnote記事では、パワハラを意識しすぎて、部下への教育や指導をためらう管理職がいると指摘されています。
大切なのは指導を避けることではなく、適切な指導方法を身につけることだという考え方です。
出典:かのまたふくたさん「パワハラが怖くて、指導できない…」
私の感想:これは、まさに私が気になっていたことです。教育専任ではありませんが、ときどき新人を教える立場になると、注意の仕方について考えてしまいます。
2.指導する側にも心理的な負担がある
新人を指導する人の悩みを題材に、シミュレーターを制作したというnote記事もありました。
新人の反応が薄い、世代間の価値観が違う、ハラスメントだと思われるのが怖いなど、教える側が直面する問題が紹介されています。
出典:Guzumaniaさん「新人指導シミュレーター」を作った話
私の感想:新人教育というと教わる人の大変さに目が向きますが、教える側にも悩みがあることがわかります。私だけが気にしているわけではないのだなと思いました。
3.「叱れない」のは若手だけの問題なのか
キャリアコンサルティングに関わる方の記事では、若手を叱れないという悩みの背景に、指導する側と教わる側の認識の違いがあると説明されています。
特に、昔ながらの「背中を見て覚えろ」という教え方では、作業の理由や基準が新人に伝わらない場合があるという指摘です。
出典:エールキャリアコンサルティング「今の若手は『叱れない』の誤解」
私の感想:工場でも、経験者にとって当たり前のことが、新人には初めてのことだったりします。教える側が説明したつもりでも、相手に伝わっていない可能性はありますね。
4.注意できないまま新人教育を続ける苦しさ
長年新人を指導してきたという方のnote記事には、注意すると相手が不機嫌になるかもしれない、辞めてしまうかもしれない、と悩んできた経験が書かれています。
新人の指導がうまくいかなかったとき、自分の責任ではないかと考えてしまう心理的な負担も紹介されていました。
出典:猫の手Lifeさん「新人に注意できず、『叱れない』を抱えたまま20年」
私の感想:自分の仕事をしながら人を教えるのは、簡単ではありません。教育を任された人が一人で悩みを抱え込まない仕組みも必要なのかもしれません。
5.ハラスメントを恐れて、必要な指導をしなくなる問題
日本ハラスメントリスク管理協会の記事では、パワハラと受け取られることを恐れ、管理職が必要な指導をためらうケースについて取り上げられています。
指導する側が萎縮すると、今度は部下が必要なことを教えてもらえず、困る場合もあるという問題です。
出典:日本ハラスメントリスク管理協会「パワハラを恐れる管理職から、指導についての相談があったら」
私の感想:注意しないことが、必ずしも相手のためになるとは限りません。特に工場では、危険な作業を見逃すわけにはいかないと思います。
6.新人にとって、怒鳴られながら教わるのはつらい
海外掲示板Redditには、日本の小規模な工場で働き始めた人から、新人教育を担当する先輩の暴言に悩んでいるという投稿がありました。
投稿者によると、仕事で間違えたり質問したりするたびに、強い言葉で責められていたそうです。
これは投稿者本人による体験談であり、第三者が事実関係を確認したものではありません。
出典:Reddit「Quitting job immediately during 研修期間」(英語)
私の感想:仕事を覚えるために質問しているのに、質問すること自体が怖くなってしまうのは問題だと思います。わからないことを確認できる雰囲気は、安全面でも大切ではないでしょうか。
7.仕事を教えてもらえないことも問題になる
別のnote記事では、新人に必要な仕事を教えず、質問にも応じないような状況が取り上げられています。
指導する側が何も言わなければ問題が起きない、というわけではないことを考えさせられる内容です。
出典:ゆうすけさん「仕事を教えてもらえないパワハラの判断基準と対処法」
私の感想:新人に厳しく言いすぎないことも大事ですが、必要なことを教えないのも違うと思います。教育する側の責任についても考える必要がありますね。
8.工場の新人教育では、安全ルールを最初に伝えるべき
工場の新人教育をテーマにしたnote記事では、作業方法より先に、安全に働くための基本を理解してもらうことが重要だと書かれています。
新人は、経験者にとって当たり前になっている危険を知らない場合があります。
出典:Factory Safety Education Lab「工場の新人教育で最初に教えることは?」
私の感想:これは工場で働く私としても大切だと思う部分です。仕事が早くできることより、まず安全に作業できることを優先したいですね。
9.安全指導は「気をつけて」だけでは伝わらない
建設現場の安全指導について書かれた記事では、単に「安全に作業してください」と伝えるだけでなく、具体的に何をしてはいけないのか、なぜ危険なのかを説明することが重要だとされています。
出典:あんしんデザインワークス「新人現場監督が知るべき!職人の安全意識を最大限に引き出す工夫」
私の感想:確かに「気をつけろ」だけでは、何に気をつければよいのかわからない場合があります。具体的に伝えることも、教育する側の技術なのだと思いました。
10.新人教育は、個人の努力だけでは解決できない
パーソル総合研究所のOJTに関する記事では、教える人によって指示や内容が違うこと、教育する時間が足りないこと、マニュアルなどが整っていないことが課題として挙げられています。
また、同研究所の調査では、教える側が感じる変化として、ハラスメントへの注意が必要になったことを挙げる人が68.0%いたと紹介されています。
出典:パーソル総合研究所「令和の新人にどう教える?OJTの機能不全を防ぐ」
私の感想:これは意外と重要な話だと思いました。人を教える難しさは、教える人の性格や能力だけの問題ではなく、職場の仕組みにも関係しているのですね。
10件の意見を調べて感じたこと
今回、教える側と教わる側の両方の意見を調べてみると、どちらにも悩みがあることがわかりました。
教える側は、必要な注意がパワハラにならないか不安になる。
教わる側は、強い言葉で怒られたり、質問しづらい環境に置かれたりすると困ってしまう。
そして、工場のように安全が重要な職場では、危険な行動をそのままにしておくこともできません。
どちらか一方が我慢すれば解決する話ではないのだと思います。
また、教え方を個人任せにせず、職場全体で安全基準や指導方法を共有することも大切なのではないでしょうか。
私自身も教育専任ではありませんが、ときどき人を教える立場になるからこそ、今回調べたことを今後の参考にしたいと思います。
※本節は公開されている個人記事、当事者投稿、専門家の解説、調査機関の資料を要約したものです。個人の体験談は事実認定された事例ではなく、調査機関の結果もすべての職場に当てはまるわけではありません。
昔の職場と今の職場、それぞれの良い面と難しい面
今回調べながら、昔と今を単純に比較するのは難しいと感じました。
昔の職場について考えたこと
先輩から後輩へ仕事を教える文化や、経験から身につけた技術を伝えることは、今でも大切だと思います。
一方で、暴力や人格否定を伴う指導は、受ける側に大きな負担を与えます。
「自分も昔はそうだった」という理由だけで、同じことを続けてよいとは思いません。
令和の職場について考えたこと
今はハラスメント防止の制度が整い、指導の仕方について考える機会も増えています。
これは良い変化だと思います。
ただ、教育する側としては、注意の言い方や伝え方を考えること自体が負担になる場合もあります。
だからこそ、個人の感覚だけに頼らず、職場全体で指導の基準を共有することが大切なのかもしれません。
新人教育を任されることもある私が、これから意識したいこと
今回調べてみて、私自身も少し考え方を整理できました。
今後、人に仕事を教える機会があったときには、次のことを意識したいと思います。
- 危険な行動は、その場でしっかり止める。
- 注意するときは、人格ではなく行動や手順について話す。
- なぜ危険なのか、理由も伝える。
- 相手が理解できたか確認する。
- 自分一人で抱え込まず、必要なら上司や周囲に相談する。
言葉にすると簡単ですが、実際の現場では難しいこともあると思います。
特に、作業が忙しいときや、同じことを何度も説明するときには、つい言葉が強くなってしまうこともあるかもしれません。
それでも、相手に仕事を覚えてもらい、安全に働いてもらうことが教育の目的です。
怒ること自体が目的にならないようにしたいと思います。
まとめ|平成が良い、令和が良いという話ではない
今回は、ドラマ『不適切にもほどがある!』を見始めたことをきっかけに、平成から令和にかけての職場コミュニケーションの変化を調べてみました。
私自身は、先輩から聞いたような暴力的な指導を直接経験したわけではありません。
ただ、ときどき新人の教育を任されることもあり、人に注意したり仕事を教えたりする難しさは感じています。
だからこそ、今の世の中では、どのような指導が求められているのか気になりました。
昔の職場がすべて悪かったわけでも、令和の職場に問題がないわけでもないと思います。
安全のために注意することは必要。でも、相手を傷つけることまで必要ではない。
今のところ、私が今回の調査から感じたのは、このことです。
とはいえ、実際に人を教育するのは本当に難しいものです。
これからも仕事を教える立場になることはあると思いますが、そのたびに悩むこともあるでしょう。
それでも、昔と今の違いを知りながら、自分なりに少しずつ良い伝え方を考えていきたいと思います。
この記事は、誰かの指導方法を批判したり、平成と令和のどちらが正しいかを決めたりするためのものではありません。
一人の工場勤務者が、日頃の疑問をきっかけに調べてみた記録です。
参考資料
※本記事は2026年11月1日時点の調査素材をもとにしています。法律上の個別判断については、厚生労働省の資料や専門家の説明をご確認ください。


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